AIに原稿の相談をしてみたら不満だったので、自分でアプリを作った

Claude Code のようなエージェント型 AI の便利さを知ったあとで、小説の執筆にチャット AI を使っていると、物足りなさを覚えるようになった。原稿を自分で読みに行き、作品の全体像を把握した上で一緒に考えてくれる「編集者」としての AI を作るまでの話。

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プログラミングをしている人なら、AI がエージェントとして働くことの便利さを知っていると思う。

Claude Code や Codex のようなツールでは、何かを依頼すると AI が自らファイルを検索して読み、コードベース全体を理解し、自分で判断して動く。これはチャットに質問を打ち込むと、こちらが書いたメッセージのみから判断して答えを返す、というユーザー体験とは根本的に別物だ。

プログラミングの世界の外でも ChatGPT や Gemini はだいぶ一般的になった。

分からないことがあれば AI に聞いたり、人生相談を AI にする人さえ少なくない。しかし、そこでの AI の使い方はほとんど単なるチャットのままだ。テキストボックスに入力して、返答を受け取る。何か必要な知識があればその都度ファイルをアップロードする。それでは AI が十分に性能を発揮することはできない。プログラマーにとって AI はもはや必須であるのに、その外では本格的な用途で使われることがまだ少ないのには理由がある。

私がこの違いに気がついたのは、一方では小説を書き、一方ではウェブサイトを制作している時だった。

チャット AI に原稿を添削してもらうのは、意外と難しい

近現代史を扱う小説を書いていた私は、初めは AI を使うのに抵抗があったが、誰かに気軽に原稿を評価・添削してもらいたいという思いで Gemini や、日本語表現に定評のあった Claude を使い始めた。

Claude は特に素晴らしかった。的確な批評をしてくれるし、たとえば「大江健三郎っぽい書き方に直して」と言えばそれなりに見れるクオリティの文章を書いてくれる。できることとできないことがあるのは当然として、便利であることは疑いの余地も無かった。

しかしすぐに壁にぶつかった。

長い原稿はそのまま貼れない。無料プランのせいかもしれないが、添付できる文章の量には制限があった。修正するたびにコピペしていると、すぐにトークン制限に引っかかるし、全体をコピペすると変更した部分ではなく以前にも聞いた同じ部分を同じように批評してくる。

仕方なく、最新の変更点だけを切り出して渡す運用になる。すると、今度は作品の全体像を知らないまま答えを返してくる。まだ書いている途中なのに、作品が完成した前提で評価してくる。序盤の 30 ページを見せているのに「結末が弱い」と言われる。

AI は賢いが、私の作品を知らなかった。

Claude Code でエージェント型 AI を知る

転機は別の仕事だった。2025 年の 11 月頃、知人の会社のウェブサイト制作を手伝っているときに、プログラマーとしては遅い方かもしれないが、ようやく Claude Code に触れた。それまでも Gemini や Claude のチャット UI でうまく動作しない部分をコピペしてバグを指摘してもらったりしていたが、本格的にエージェント型コーディングツールを使ったのはこの時が初めてだった。

こちらが指示を出すと、AI が自分でファイルを読み、文脈を理解し、コードを書く。初めは試行錯誤が必要だったが、慣れてくればシンプルなウェブサイトくらいは、ほとんど手直しせずに一気に書けてしまう。こちらがコードベースを説明する必要がない。AI が自分で把握する。

そのとき思った。「これは文章執筆にも使えるのでは?」

原稿のファイルを丸ごと読ませて、プロジェクト全体を理解させた上で批評してもらう。チャット UI では構造的に不可能だったことが、エージェント的なアプローチなら自然にできる。

1 週間でプロトタイプ

2025 年の年末、仕事を納めた後に、猛烈な意欲に駆られてコードを書き始めた。

Claude Code, Cursor, Antigravity, Open Code など、色々なツールの無料枠を使いながら書いた。結局有料プランを契約すべきだと思い、最も性能が良いと感じた Claude Code のプランを契約した。

生成 AI の特性からして当たり前だが、作る機能が一般的であればあるほど細かい指示抜きで AI は完璧に作り上げた。ファイル管理の機能や、シンプルなエディタ機能を作るのにほとんど苦労は要らなかった。縦書き機能やルビのような日本語組版に欠かせない機能は、AI 任せではほとんど完成できなかったが、必須機能とはいえないのでこの段階では後回しにした。

年が明けるまでの 1 週間でプロトタイプがほぼ完成した。左にファイルツリー、真ん中にエディタ、右に AI チャット。原稿を読み込んで返答する AI。「編集者のような AI」というコンセプトは、まだ改善の余地はたくさんあるものの、この時点でほぼ完成していたと言って良い。

実際に作ったソフトウェアを試すのはドキドキするものだ。ましてや AI だと試すにも API の費用がかかるので、尚更だった。元々書いていた自分の小説を読み込ませ、うまく書けているか質問をした。

まずまずの回答だった。

原稿を批評するためにチューニングしたプロンプトを与えたこともあり、これまで Gemini や Claude のチャットに原稿を貼り付けていたときよりも、深い回答が返ってきた。まだエージェント的に自ら読むべきファイルを探したりはできないが、少なくともこの時点で単なるチャットを上回ることはできていたと思う。

真のエージェント的編集者の完成

その後、二ヶ月近くかけて完成品に近づいた(1 週間でプロトタイプができた割には、その後長い時間がかかったが、エンジニアはみんなそういうものだと分かるだろう)。プロトタイプでは全ての原稿をただ読み込むだけだったが、AI にファイル検索機能を持たせ、また原稿を自動で AI に投げてあらかじめ要約を保存しておくことで、AI が最初は要約で全体を把握し、必要に応じて原文を読みに行くという動きが可能になった。

できあがったアプリで再び原稿の相談をした。AI の返事ははっきり変わった。

単なるチャット AI はもとより、プロトタイプも明らかに上回る深く・広い視野を持った回答が返ってきた。AI は元々十分に賢かった。しかし十分に作品を把握していなかった。二ヶ月の開発で、その欠けている部分を補うことができた。

ユーザー体験としても明らかに優れていた。まずコピペがいらない。AI は必要なファイルを自分で読みに行く。「3 章の終わり方、どう思う?」と聞けば、1 章からの流れを踏まえて答えてくれる。全体の目標文字数も設定すれば、まだ途中であることも理解して返答をしてくれる。中盤の原稿に「終わり方が微妙です」のような的外れな指摘はない。

ここまで来れば、壁打ち相手としての質が、根本的に変わる。「編集者」と呼んでも恥ずかしくないパートナーが作れた。

エージェント型 AI と進める、新しい執筆体験

プログラマーにとってエージェント的(=自発的にファイルを読みプロジェクトを理解する)AI はもう日常だが、この体験はプログラミングの世界に閉じている。

書き手にとっての AI も、チャットで質問する相手ではなく、原稿を全部読んだ上で一緒に考えてくれる編集者であるべきだ。

そういう考えで、Core という執筆アプリを作りました。

Core — https://corewrite.app


※ この記事は note にも掲載しています。

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